シンドラーエレベーター事故被害者の会~赤とんぼの会/6・3の会

Q&A

エレベーター戸開走行事故 Q&A(改訂版)            

Ⅰ. シティハイツ竹芝のエレベーター戸開走行事故とは

Q1 シティハイツ竹芝の事故はどういう事故だったのですか?
A1 「2006(平成18)年6月3日に、東京都港区のシティハイツ竹芝で、シンドラー社製エレベーターが扉が開いたまま上昇( 戸開走行 とかいそうこう )したため、降りようとしていた都立小山台高校2年生(当時)の市川 大輔 ひろすけ さんが、エレベーターの床と外枠の上辺にはさまれて死亡した事故です。」
Q2 その事故はなぜ起きたのですか?
A2 「エレベーターのかごが12階に止まって扉が開き、大輔さんが降りようとした時に、エレベーターのブレーキが故障して、かごが突然上昇したために起きました。
 事故後、港区が事故機の隣に設置されていた同型エレベーターを使って行った実験では、エレべーターのかごが上昇し始めてから、かごの床が外枠の上辺を通過するまで、3秒しかかかりませんでした。」
Q3 エレベーターが落ちたのですか?
A3 「いいえ、ちがいます。エレベーターは落ちたのではなく、上昇したのです。」
Q4 なぜエレベーターが上がるのですか?
A4 「事故当時、28人乗りのかごに2人が乗っており、かごと釣合おもりの重さは釣合おもりの方が749㎏も重い状態でした。したがって、かごが動かないように止めておくためにはブレーキが効いていることが必要でした。しかし、ブレーキが故障して、かごを止めておくことができなくなったため、釣合重りが重さで急速に下がり、それに引っ張られてかごは急速に上昇してしまいました。かごの床と外枠の上辺に挟まれた市川大輔さんの体には、749kgの重さが1時間かかりつづけたのです。」
Q5 市川大輔さんが自転車にまたがったまま降りようとしたので事故になったのではないのですか?
A5 「いいえ、ちがいます。
 そもそもエレベーターは扉が開いている時は動いてはいけません。
 もし自転車にまたがっているのがダメなら、ベビーカーも、車いすに乗っている人も、台車を押している人も、ストレッチャーに乗っている人も、みな事故にあっても仕方がないことになってしまいます。
 かごが突然動き出してから挟まれるまでに長くて3秒しかかからなかったのですから(Q2参照)、どんなに運動神経が良くても対応することは困難です。刑事裁判の判決も民事裁判の和解条項もいずれも市川大輔さんには何の落ち度もなかったことを認めています。」
Q6 シンドラー社製のエレベーターのブレーキはなぜ故障したのですか?
A6 「エレベーターは、かごが止まるとブレーキがかかり、止まってから扉が開き、扉が開いている間はブレーキによってかごが動かないよう固定される仕組みになっています。しかし、このエレベーターでは、ブレーキが異常摩耗によってきかなくなってしまったため、扉が開いたまま急速にかごが上がる( 戸開走行 とかいそうこう )事故になってしまいました。」
Q7 シンドラー社は謝罪したのですか?
A7 「いいえ、現在に至るまでしていません。遺族は事故以来ずっと謝罪するようシンドラー社に求めてきましたが、同社はこれを拒否してきました。そして2016(平成28)年に営業を日本オーチス社に譲渡して、日本から撤退してしまいました。無責任だと言わざるを得ません。
 民事裁判の和解ではシンドラー社は『深く遺憾の意を表する』という表現になっています。」
Q8 では今は、どういう状況なのですか?
A8 「刑事裁判と民事裁判が行われ、終了しました。
 東京地方検察庁がシンドラー社の保守点検責任者二人とSEC社(保守点検会社)の責任者三人を業務上過失致死罪で起訴し、刑事裁判が2013(平成25)年3月から行われ、地裁判決はシンドラー社の被告人を無罪、SEC社の被告人らを有罪としましたが、2018(平成30)年2月・3月の高裁判決は、両社の被告人全員を無罪としました。
 一方、被害者遺族がシンドラー社、SEC社、日本電力サービス社(保守点検会社)、港区(所有者)及び港区住宅公社(管理者)に対して2008(平成20)年12月に提訴した民事裁判は、2017(平成29)年11月24日に和解に至りました(和解条項を参照してください)。
 被害者遺族の市川正子さんは、『和解は終点ではなく、通過点に過ぎない。エレベーターの安全のためにこれからも歩き続ける』と言っています。」
Q9 裁判の結果を、被害者遺族の市川正子さんはどう受けとめているのですか?
A9 「『刑事裁判の高裁で、保守、技術情報の共有、不具合情報や安全対策等の共有がなされていなかったことの責任や、ブレーキの摩擦を示す点検個所が保守点検報告書等に写真やデータ・数値で記録し引き継いでいなかったことの責任が、全く審理も判断もされなかったことに、被害者遺族として大きな憤りを感じます。これらをやっていたら、事故は防げたはずですし、いのちを守ることができたはずです。
 このようなことが繰り返さないように、民事裁判の和解は終点ではない、通過点にすぎず、エレベーターの安全のため、利用者の命を守るために、これからも歩き続けます。』と言っています。」

 

Ⅱ. 外国と日本 行政の問題

Q10 外国ではどんな事故が起きたのですか?
A10 「2002年に香港でシンドラーエレベーターによる戸開走行事故が起こり、少年が亡くなっています。」
Q11 香港ではその後どうなったのですか?
A11 「法律が改正されて二重ブレーキが義務付けられました。二重ブレーキを義務付ける法律は、その後韓国、アメリカのいくつかの州、EU、中国、などに広がりました。」
Q12 日本ではその時に二重ブレーキにはならなかったのですか?
A12 「管轄官庁である国土交通省は、シティハイツ竹芝の事故が起きるまで二重ブレーキに関する世界の動向を調べておらず、法改正を行いませんでした。この事故の後、2009(平成21)年9月に建築基準法の施行令を改正して、新しく設置されるエレベーターに対しては戸開走行保護装置(Q14参照)を義務付けました。」
Q13 すべてのエレベーターに戸開走行保護装置が設置されたのですか?
A13 「いいえ、ちがいます。この戸開走行保護装置設置義務付けは、施行令改正の後に設置されるエレベーターには適用されますが、施行令改正の前に設置された70万台のエレベーターには適用されません。」
Q14 戸開走行保護装置とは何ですか?
A14 「二重ブレーキ、戸開走行検出装置、二重系の制御装置の3つを合わせたものを指します。」
Q15 現在は、事故が起きないようにどのような対策が取られているのですか?
A15 「監督官庁である国土交通省は、2016(平成28)年2月に『昇降機の適切な維持管理に関する指針』を作り、エレベーター所有者に対して『なすべき事項』を定めています。
 しかし、これはあくまで『指針』であって法的拘束力はありません。
 現在、国土交通省は各地で『指針』の説明会を保守点検業者などに対して開いています。しかし、法的拘束力を持たせなければ、最終的な安全確保は保障されません。」
Q16 どんな法的拘束力が必要なのですか?
A16 「現在1年に1回の定期検査の報告には、保守点検業者がデータを数値や写真で添付することが義務づけられています。しかし通常月1回の保守点検の報告書には、数値や写真の添付が義務づけられていないので、その間に事故が起きれば、原因は分からないままになってしまいます。従って、月1回の保守点検の際にも報告書に数値や写真でデータを添付することを義務付けるべきです。
 もう一つは、戸開走行保護装置が義務づけられていない既設の70万機のエレベーターにも、戸開走行保護装置を設置するよう義務付けるべきです。」
Q17 既設エレベーターの事故はシティハイツ竹芝の事故後も起きているのですか?
A17 「事故後の2012(平成24)年には金沢市で同じシンドラー社のエレベーターの戸開走行事故が起き、女性が亡くなっています。
 死亡事故に至らない戸開走行事故は、それ以外にも何件も起きています。」
Q18 すべてのエレベーターに戸開走行保護装置がつけば安全なのですか?
A18 「そう簡単には言えません。戸開走行保護装置があったとしても、日常の保守点検は非常に大事です。保守点検の中で毎回、チェックすべきところをきちんとチェックし、数値や写真などの証拠を残していくことが、安全のためには重要です。
 戸開走行保護装置の設置と、日常の保守点検は車の両輪のようなものです。」

 

Ⅲ. メーカーと点検業者の問題

Q19 シティハイツ竹芝のエレベーターは、事故前は安全だったのですか?
A19 「いいえ。シティハイツ竹芝が作られエレベーターが取り付けられたのは1998(平成10)年ですが、早い段階から、さまざまの不都合が起こり、苦情が出ていました。」
Q20 どんな苦情でしたか?
A20 「異常音の発生、停止階手前でストップ、ドアが開かない、段差が発生、閉じ込め等々です。閉じ込め事故では、救急隊も出動しています。」
Q21 シンドラー社の保守点検担当者が起訴されたのはなぜですか?
A21 「シンドラー社が保守点検をしていた2004(平成16)年11月の段階で、エレベータ-が所定の位置からずれて止まる故障があり、ブレーキの故障に気づきながら、根本的な修理をしなかった、という疑いです。しかし結局は数字や写真などのデータが残されていないので、証拠不十分で無罪とされました。」
Q22 シティハイツ竹芝のエレベーターの保守点検は、ずっとシンドラー社が行っていたのですか?
A22 「いいえ、ちがいます。2001(平成13)年までシンドラー社が行っていましたが、2002(平成14)~2004(平成16)年がシンドラー社、2005(平成17)年は日本電力サービス、2006(平成18)年はSEC社と変わりました。」
Q23 なぜそんなにしばしば変わったのですか?
A23 「港区が2002(平成14)年度から入札制度にしたからです。」
Q24 保守点検の1年間の料金はいくらだったのですか?
A24 「1年間のフルメンテナンス契約で、
     シンドラー社が  446万円~364万円
     日本電力サービスが166万円
     SECが     120万円です。」 
Q25 フルメンテナンス契約とは何ですか?
A25 「保守点検費用だけでなく、修理の部品代もすべて含む費用です。」
Q26 そんなに安くなっていって、大丈夫だったのですか?
A26 「大丈夫とは言えません。シティハイツ竹芝では事故の前の3年間で港区が発表した不具合が43件出ていました。必要な点検が実際に行われていたかどうかは数字や写真などのデータが一切残っていないので分かりません。」
Q27 入札制度にも問題があるのですね。ではどうしたらいいのでしょうか?
A27 「金額だけで判断するのでなく、入札にあたって、保守点検業者の必要な資格や技術を備えているかどうかを確認することが必要です。これについては、国土交通省が2016(平成28)年に発表した『維持管理指針』に詳しく載っています。」
Q28 日本電力サービスやSECは独立系点検業者だということですが、独立系とは何ですか?
A28 「エレベーター製造会社の系列の保守点検業者と違い、それ以外の独立した点検業者のことです。」
Q29 製造会社と独立系が対立していると聞きましたが?
A29 「そうです。そのために問題が主にふたつあります。一つは、製造会社が独立系業者に仕様書やマニュアルを渡さないこと、二つ目は部品を売り渋ることです。
 国土交通省が2016(平成28)年に発表した『維持管理指針』では、これを解決するために、製造会社は仕様書や点検マニュアルを必ず所有者に渡さねばならず、所有者から保守点検業者に見せるという形をとっています。これが実際に機能しているかどうかの点検が必要です。
 部品については製造会社からの売り渋りがあり、独立系会社が1985(昭和60)年に裁判を起こして、売り渋りをしてはいけないという判決が出ました。しかし、実態としては、まだ売り渋りは無くなってはいないようです。」

 

Ⅳ. 事故が起きた時の救出には、油圧ジャッキが必要

Q30 シティハイツ竹芝の事故の時、救出にとても時間がかかったと聞きましたが?
A30 「そうです。かけつけた消防署員も保守点検業者も、戸開走行事故が起きた時の対処方法を知らなかったのです。エレベーターの同乗者からマンションの管理室に事故の通報があってから、救出まで1時間以上かかりました。」
Q31 どうすればよかったのですか?
A31 「結論から言えば、戸開走行の場合は、エレベーターのかごの床と外枠の上辺が大きな力で挟んでいるので、それを解放するには油圧ジャッキが絶対に必要なのです。
 しかし保守会社はそれを知らず、手動ハンドルを回し続けて時間を浪費しました。消防署員は油圧ジャッキを持ってきておらず、後に電話して取り寄せました。そのために余分な時間がかかってしまいました。
 保守会社と消防署が、戸開走行事故が起きたときは油圧ジャッキが必要であることを知っていて、油圧ジャッキの使い方を訓練していれば、助かる可能性があったのです。」
Q32 今後、万が一戸開走行事故が起きたときに備えて、どうすればいいのですか?
A32 「第1に消防署と保守会社が、戸開走行事故の危険性と、油圧ジャッキの必要性について知ること、第2にそれぞれが事故が起きた場合のマニュアルを持つことです。そして第3に、マニュアルに基づいて日常的に油圧ジャッキの使い方を含め、訓練することが絶対に重要です。」
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