再発防止「再考機関先頭切って」 エレベーター、長男無くした女性

(共同通信 2019/03/02)

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二重ブレーキ設置13%のみ 国会エレベーター、民間下回る

(共同通信 2019/03/02)

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二重ブレーキ設置13%のみ/国会EV、民間水準下回る/事故遺族、率先整備求め/衆参両院「必要性は認識」

(共同通信 2019/03/02)

 衆参両院が所有する国会議事堂本館や議員会館などの施設にあるエレベーター(EV)で、扉が開いたまま昇降する「戸開走行(とかいそうこう)」事故防止に有効な二重ブレーキがあるものは国会全体で13%にとどまり、民間の水準より7ポイント程度下回ることが共同通信の調査で2日分かった。設置済みは130基中17基。うち陳情などで年間延べ30万人超の市民が訪れる両院の議員会館は54基中3基だった。
 二重ブレーキ設置は2006年に都内で高校2年市川大輔さん=当時(16)=が死亡した事故を機に09年9月以降の着工分に義務付けられた。それ以前に設置、着工されたEVに設置義務はなく、費用負担面などから社会全体で設置は進んでいない。国会で未設置の113基も義務の対象外。
 市川さんの母正子さん(66)は「息子の無念を再発防止に生かしたいのに設置が進んでいないのは、息子に申し訳ない。心が痛む」と打ち明ける。「国権の最高機関が先頭を切らなければ社会全体で設置が進むわけがない。二重ブレーキの重要性を社会に伝え、設置を広げる役割を果たしてほしい」と訴える。
 国土交通省の昨年11月の発表などによると、民間の設置率は20%程度。国会は議院別でみると衆院5%(80基中4基)、参院26%(50基中13基)で衆院の遅れが際立つ。
 衆参両院は設置の必要性は認識しているが、予算上の事情で遅れていると説明。詳しい理由に(1)施設が全体的に古く、限られた予算の中で設置が進まない(2)設置には大規模な改修が必要で1基当たり数千万~1億円の費用がかかる(3)耐用年数や更新までの期間が残っている―ことを挙げた。
 衆院は80基のうち63基が義務化までの8年間に設置、着工されたものだとし、参院は後付けできる機種で改修予算が数百万円で済むものには全てに優先設置したと説明。両院とも「予算や耐用年数を考慮し、少しでも早く多くに設置できるよう検討する」としている。


再発防止「先頭切って」/事故で長男亡くした女性

(共同通信 2019/03/02)

 扉が開いたまま昇降するエレベーター事故防止に有効な二重ブレーキの国会での設置率が13%だったことを受け、2006年の事故で長男市川大輔さん=当時(16)=を亡くした正子さん(66)は2日までに取材に応じ「息子の命と向き合っていない。国権の最高機関が先頭を切らなければ、社会全体で設置が進むわけがない」と語った。
 国会には傍聴などで多くの市民が訪れ、議員や職員も日常的にエレベーターを利用している。正子さんは「息子の無念を再発防止に生かしたいのに設置が進んでいないのは息子に申し訳ない。心が痛む」と打ち明けた。
 事故後、エレベーターを利用することができないという。「あのとき二重ブレーキがあれば…」との思いから、国内で稼働する全基への二重ブレーキ設置を求め、活動を続けてきた。国会では参考人として意見を述べたことがあるほか、議員会館にも要望活動などで数え切れないほど足を運んできたとして「みんなの安全に関わる問題であり、国会には二重ブレーキの重要性を社会に伝え、設置を広げる役割を果たしてほしい」と述べた。
 国会議事堂の本館や分館を傍聴で訪れる市民は年間延べ2万人前後で、多くはエレベーターを利用。参観ツアーでは足の不自由な人や車いす利用者らの案内にエレベーターを使っている。だがある国会職員は「二重ブレーキが設置されているかどうかすら多くの職員は知らない」と話した。
 年間延べ30万人超の市民が訪れる衆参両院の議員会館では、大半に二重ブレーキがない。自民党議員の秘書は取材に「(設置の有無を)知らない。どのエレベーターで支援者を案内すればいいのか」。野党議員も「国会の一員として恥ずかしい。何としてでも改善したい」と話している。


人命最優先、範を示せ/エレベーターの事故防止

(共同通信 2019/03/02)

【解説】国会のエレベーターで事故防止に有効な二重ブレーキの設置が遅れている実態が明らかになった。国は民間に設置を促す立場だが、足元がおぼつかないようでは説得力に欠ける。国権の最高機関として人命を最優先に設置を進め、社会に範を示す責務がある。 二重ブレーキを巡っては、消費者安全調査委員会が2016年に設置状況の把握と設置促進の検討を国に提言した。だが国土交通省によると、設置率は民間が20%程度、中央省庁が24%。国会はこれらを下回っており、改善への動きは鈍い。
 国会は設置が進まない理由に予算面の事情などを挙げるが、エレベーターの安全対策は二重ブレーキの設置とともに保守管理の徹底も重要だ。遺族は、設置に加え(1)不具合情報が具体的に分かるようデータや写真も添えて記録、共有(2)事故時の初動・救助体制の整備、訓練―などの取り組みを広げるよう望んでいる。
 国は「事故の教訓を安全に生かしてほしい」との遺族の思いに真摯に向き合うべきだ。現状をどう打開するかの議論を深め、安全確保の歩みを着実に進める必要がある。